第102回支援センターセミナーを共催しました。


■ 日 時:平成25年12月3日(火)17:30 ~18:30

■ 場 所:基礎研究棟2階 教職員ロビー

■ 演 題:質量分析を利用したアセチルコリン局在の可視化について
            
■ 演 者:矢尾 育子(浜松医科大学メディカルフォトニクス研究センター 基盤光医学研究部門 光イメージング研究室准教授)


   
矢尾育子先生によるセミナー セミナー終了後の記念撮影  
 
<講演要旨>
  神経伝達物質は神経シナプス間の情報伝達を担う。主要な神経伝達物質のひとつであるアセチルコリンは、副交感神経や運動神経に働きかけ、学習・記憶、睡眠などにも深く関わっている。パーキンソン病やアルツハイマー病などにおいても、アセチルコリンの存在量が症状に大きく関わると考えられている。  我々は、神経活動状態や疾患の病態メカニズムを理解する目的で、組織内のアセチルコリン局在の可視化を試みた。従来の検出方法では、アセチルコリンの受容体や分解酵素に対する抗体を用いた間接的な手法が一般的であったが、今回我々はアセチルコリンそのものを直接検出する手法として質量分析(mass spectrometry; MS)を利用する「質量分析イメージング法」を用いた。質量分析イメージング法は、二次元的に質量分析を行い、得られた質量分布を再構築し、画像化する手法である。組織切片上でレーザーを走査しながら直接各点の質量スペクトルを得ることで、物質の質量情報と位置情報の同時取得が可能となる。  脊髄および脳切片の質量分析イメージング画像から、アセチルコリンは脊髄前角においてはコリン作動性運動神経細胞の細胞体、脊髄後角および脳では神経終末に多く検出されていることを確認した。さらに、本研究で直接検出された神経伝達物質の局在は、他の間接的手法で検出された過去の報告と比較し整合性があるものであった。特に分解酵素(アセチルコリンエステラーゼ)の産生細胞の局在と一致したことから、質量顕微鏡法で検出されたものは神経終末に局在するアセチルコリンであることが示唆された。質量顕微鏡法はアセチルコリンをはじめとする神経伝達物質の組織内分布の可視化に有用と考えられる。