鼻粘膜を用いたアルツハイマー病の診断法開発のための基礎研究

対象者

 2010年4月1日から2017年3月31日までに、福祉村病院で剖検され、ブレインバンクに登録されたアルツハイマー病、その他の認知症、非変性神経疾患対照例(脳梗塞、脳出血例も含む)。

研究のお願い

 福祉村病院長寿医学研究所では、滋賀医科大学神経難病研究センター、第一三共株式会社と共同で、「鼻粘膜を用いたアルツハイマー病の診断法開発のための基礎研究」という研究を行います。この研究は、2010年4月1日から2017年3月31日までに、福祉村病院で剖検され、ブレインバンクに登録されたアルツハイマー病、その他の認知症、非変性神経疾患対照例(脳梗塞、脳出血例も含む)の剖検脳ならびに鼻粘膜を調査する研究で、研究目的や研究方法は以下の通りです。直接のご同意はいただかずに、この掲示などによるお知らせをもってご同意を頂いたものとして実施されます。研究対象となる患者さんのご遺族の方におかれましては研究の主旨をご理解いただき、本研究へのご協力を賜りますようお願い申し上げます。この研究へのご参加を希望されない場合、途中からご参加取りやめを希望される場合、また、研究に関するご質問は下記の問い合わせ先へご連絡下さい。

研究の内容

(1)研究の概要について
 研究課題名:鼻粘膜を用いたアルツハイマー病の診断法開発のための基礎研究
 研究期間:  2017年11月2日~2019331
 実施責任者: 滋賀医科大学神経難病研究センター  教授  遠山 育夫

(2)研究の意義、目的について 
 認知症は大きな社会問題であり、その中で最も多い認知症はアルツハイマー病です。アルツハイマー病は、脳に蓄積した老人斑の主成分であるβ-アミロイド(A β)と異常にリン酸化された タウ蛋白が主成分である神経原線維変化と、それらにより引き起こされると考えられる神経細胞死を特徴とします。このうち老人斑は、発症の10年から20年前から出現することが知られており、 老人斑の検出はアルツハイマー病の早期診断に有用です。一方、神経原線維変化は認知症の発症や認知症の重症度に深く関わることが知られています。現在、アルツハイマー病の治療薬として 4種類の薬が認可され、根本治療薬ではないものの、早期から服用すると認知症の症状を和らげ、進行も遅くなると考えられています。すなわち、早期に認知症を診断し、治療を開始することが 重要です。  アルツハイマー病の診断には、神経心理学的な検査、画像検査、髄液検査等が有用とされます。脳の中の老人斑や神経原線維変化を直接見ることはできないため、凝集したAβやタウ蛋白に 特異的に結合する化合物を放射性物質で標識して投与してPETを用いて画像化するPET画像法や、髄液中のAβやタウ蛋白、リン酸化タウ蛋白の測定が、診断に有用とされています。しかしながら、 PETは放射性物質の投与が必要で費用も高額です。髄液検査は、背中に針を刺すため患者の身体的負担も多く、穿刺後に脳内の髄液圧が低下し、強い頭痛がくることもあります。そのため、より 安全で簡便な検査法の開発が望まれています。  我々は、鼻粘膜に着目しました。鼻腔は脳底部の骨(篩板)を境にして脳と接しており、鼻粘膜と脳をつなぐ嗅神経が篩板を貫いており、脳内物質が血液を介さずに鼻粘膜に到達します。 我々は、Aβをラット脳室に注入すると血液を介さずに鼻腔に出てくることを確認しました。さらに、アルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスを用いて検討したところ、鼻粘膜のAβ沈着量が 脳内のAβ沈着量と正比例することを発見しました。そこで、滋賀医科大学倫理委員会の承認(25-51-2)を得て、ヒト鼻腔内のAβやタウ蛋白、リン酸化タウ蛋白を測定したところ、ヒト鼻腔内 にもAβやタウ蛋白、リン酸化タウ蛋白が検出されることが明らかになりました。これらの結果は、鼻腔内検体中のAβやタウ蛋白、リン酸化タウ蛋白を測定することで、アルツハイマー病をはじ めとする認知症の診断ができる可能性を示しています。そこで本研究では、ブレインバンクに保存されている剖検脳と鼻粘膜を用いて、鼻粘膜に沈着している異常蛋白凝集体の種類と部位を同定 するとともに、ELISA方やバイオアッセイ法を用いて沈着量や沈着物質を解析し、鼻粘膜の病変が脳の病変を反映しているかどうか解析します。このデータは、鼻粘膜を用いたアルツハイマー病の 診断法を開発する上での貴重な基礎データになると考えます。鼻粘膜を用いてアルツハイマー病をはじめとする認知症の診断が可能となれば、医療費が削減でき、患者さんへの侵襲も減るため患者 さんやそのご家族へ貢献できると考えています。

(3) 研究の方法について  
 本研究は、福祉村病院ブレインバンクに保管されている剖検脳標本と鼻粘膜を用いる後ろ向き研究です。具体的には、2010年4月1日から2017年3月31日までに、 福祉村病院で剖検され、福祉村病院ブレインバンクに保存されている剖検脳ならびに鼻粘膜のうち、アルツハイマー病10症例、その他の認知症10症例、非変性神経 疾患対照例(脳梗塞、脳出血例も含む)10症例を用います。剖検脳および鼻粘膜の固定標本からパラフィン切片あるいはクリオスタット標本を作製して、神経病理 学的染色を行います。同時に、β-アミロイド、タウ、リン酸化タウ、αシヌクレイン、TDP-43など、神経変性疾患関連蛋白に結合する抗体およびプローブを用いて、 それら神経変性疾患関連蛋白の局在や発現の違いを検討します。さらに、局在を詳細に検討するため、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクロ グリアなどの細胞マーカーとの免疫二重染色やミラー切片での免疫染色も行います。凍結標本は、β-アミロイド40、β-アミロイド42、タウ、リン酸化タウ、αシヌ クレイン、TDP-43のELISA法と総蛋白定量を行い、個々の症例の沈着量を明らかにします。また、一部のサンプルを第一三共のベンチャーサイエンスラボラトリーに 送付し、バイオアッセイを行います。

(4)予測される結果(利益・不利益)について

 参加頂いた場合の利益・不利益はありません。

()個人情報保護について
 研究にあたっては、個人情報を直接同定できる情報は使用されません。福祉村ブレインバンクの検体についてはすべて匿名化され、性別、年齢、死後 経過時間、診断名と病理所見のみが、滋賀医科大学、第一三共のベンチャーサイエンスラボラトリーに送られます。また、研究発表時にも個人情報は 使用されません。

(5)−⑴.試料・情報は、上記(1)、(2)、(3)の目的と方法によって使用します。

(5)-(2) 試料を利用するのは、以下の研究代表者と研究分担者です。

  研究代表者
  神経難病研究センター・神経診断治療学部門  教授   遠山 育夫  077-548-2330

  分担研究者
  神経難病研究センター・神経診断治療学部門  准教授  柳沢大治郎 077-548-2331
 
  神経難病研究センター・神経診断治療学部門  特任助教 加藤 智子 077-548-2331
 
  福祉村病院長寿医学研究所・神経病理研究所 所長 橋詰良夫 0532-46-7511     
 
  福祉村ブレインバンク責任者 名古屋市立大学医学研究科地域医療教育学分野 特任教授 赤津 裕康   052-853-8527    
   福祉村長寿医学研究所・神経病理研究所前副所長・現研究員 

  第一三共株式会社 ベンチャーサイエンスラボラトリー 主任研究員 大山 高央 03-3492-3131

()研究成果の公表について

この研究成果は学会発表、学術雑誌およびデータベースなどで公表します。


お問い合わせ先

名古屋市立大学医学研究科地域医療教育学分野 特任教授  福祉村長寿医学研究所・研究員 赤津 裕康   
住所:520-2192 愛知県豊橋市野依町字山中19-14

電話番号: 0532-46-7511  メールアドレス: akatu@chojuken.net

滋賀医科大学神経難病研究センター 特任助教  加藤智子 
住所:520-2192 滋賀県大津市瀬田月輪町

電話番号: 077-548-2331  メールアドレス: tkato@belle.shiga-med.ac.jp