光学医療診療部は、内視鏡を使用した検査や治療を行う大学病院内の中央診療部門であり、その対象疾患は多岐にわたります。
消化器内視鏡検査は上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)といった一般的な検査とともに、胆道膵臓系の疾患に対する内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や超音波内視鏡検査(EUS)、小腸疾患に対してはカプセル内視鏡検査、小腸内視鏡検査なども行っています。現在では一般的な内視鏡検査のみならず、先進的な精査内視鏡検査、手技内視鏡検査、治療内視鏡検査も積極的に行っています。また、他院で対処が困難であった内視鏡治療などにも対応しています。消化管関連の内視鏡検査は日本消化器病学会や日本消化器内視鏡学会の指導医や専門医が中心に行っており、内視鏡に関連した診断、手技、治療について、セカンドオピニオンを含めて対応いたします。
呼吸器疾患の検査・治療のための気管支鏡検査も同診療部門で行っています。気管支鏡検査では通常の生検のみならず、診断率向上のために縦隔リンパ節腫脹の確定診断等に対して超音波気管支鏡ガイド下針生検を、末梢の小型腫瘤影の診断率向上を目的にガイドシース併用気管支腔内超音波断層法を用いています。
早期癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を積極的に施行しています。症例数は年々増加しており、年間150例以上となっています。胃癌は日本胃癌学会が編集した『胃癌治療ガイドライン』、食道癌は日本がん治療学会が編集した『がん診療ガイドライン』、大腸腫瘍は日本消化器内視鏡学会が編集した『大腸 ESD/EMRガイドライン』に準拠して行っており、安全、かつ適切な加療を心がけています。2017年には消化器内視鏡学会から”抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン直接経口抗凝固薬(DOAC)を含めた抗凝固薬に関する追補2017”が、胃癌学会より”胃癌治療ガイドラインの第5版”が発刊され、我々もこの最新の治療ガイドラインに合わせて治療方法を変更しています。また、ESDにおける消化管出血や消化管穿孔などの合併症率も1-5%程度と全国の大規模施設と同程度の内視鏡治療を提供しています。
当院は、小腸内視鏡の開発に携わっており、シングルバルーン小腸内視鏡を導入し、診断や挿入手技の確立に貢献して参りました。また、小腸カプセル内視鏡検査も早期から導入しており、地域および二次医療圏からの依頼も受けて検査を施行しております。小腸癌や小腸悪性リンパ腫の早期診断だけでなく、上部消化管内視鏡検査や下部消化管内視鏡検査を行っても原因不明の消化管出血(OGIB)に対する出血源検索や止血処置を積極的に行っております。また、当院消化器内科の特色でもある炎症性腸疾患診療との関連でクローン病患者に対するシングルバルーン小腸内視鏡を用いた診断、内視鏡的バルーン拡張術による小腸狭窄の内視鏡治療も実績を重ねています(特にクローン病の小腸狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術)。この他、ショートタイプの小腸内視鏡も導入しており、術後再建腸管に対する内視鏡的逆行性胆管膵管造影にも対応しております。小腸は内視鏡的処置が出来ない場合、手術加療が必要になる場合も多く、より先進的な内視鏡検査・治療を導入し、低侵襲な医療の提供を心がけています。
微小膵癌や早期慢性膵炎、胆管癌などの胆膵疾患は通常の画像検査では発見されにくい特徴があり、当院では、超音波内視鏡検査(EUS)、超音波内視鏡を用いた針生検(EUS-FNA)、胆道鏡、など最新の内視鏡機器を用いた診断を積極的に実施しています。
また、進行癌の閉塞性黄疸に対して超音波内視鏡下肝内胆管胃吻合術(EUS-HGS)や重症膵炎の壊死性膵膿瘍に対する超音波内視鏡下ドレナージ術など最新の高難度内視鏡治療について多数の施行実績があります。
消化管内に種々の原因における消化管出血に対応しており、内視鏡を使用した止血術が困難な場合には、放射線科・外科・救急集中治療部とも連携を図り、病態にあわせた適切な治療を24時間行える体制を整えています。上部消化管や下部消化管の精査で出血源が同定できない場合にもカプセル内視鏡や小腸内視鏡検査で出血源検索や止血処置を行なっています。
薬剤治療を使用しても症状が強く残るCOPD患者さんに対して、気管支バルブ治療を行うことになりました。経気管支鏡的に一方弁の塞栓子を挿入し、肺内に貯留した空気を体外に出すことが目的です。
以前は上部消化管内視鏡検査や胃瘻チューブ交換は、患者支援センターを通して予約していただくことが可能でしたが、内視鏡検査におけるご本人のADLや薬剤の内服状況の確認などの医療安全の観点より、一度消化器内科外来を受診していただくことになりました。当院での精密検査・加療等を希望される場合には、消化器内科・呼吸器内科・呼吸器外科の外来を直接受診していただくか、患者支援センターを通じて外来を受診していただき、担当医とご相談ください。患者さんから直接光学医療診療部への検査の申し込みは受け付けていませんのでご注意ください。ご不明な点は患者支援センターにご相談ください。
希望者には鎮静薬を使用した内視鏡検査を行っております。ただし、その場合には検査終了後一定期間は病院内で待機していただきます。また、検査終了後は患者さん本人による自家用車の運転はできません。さらに、鎮静薬を使用した場合には病院から自宅までの移動時に付き添いの方の同伴をお願いしております。
光学医療診療部で行われる消化器内視鏡検査は消化器内科および光学医療診療部医師が担当し、気管支鏡検査は呼吸器内科および呼吸器外科医師が担当しています。
上部消化管内視鏡検査は年間約3,900例、下部消化管内視鏡検査は年間2,400例、小腸内視鏡検査は年間290例、胆膵系の内視鏡検査は年間680例、気管支鏡検査は約150例で年間7,400例程度の診断、治療を行っています。
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